
ウェア『MiLCA』が発売され、発売を記念してソフトウェアの説明会をが催されたので、参加してみました。
LCAソフトウェアって何??という方もいらっしゃるかと思いますが、LCAとは、”ライフサイクルアセスメント”の頭文字ですね。でもって、これは、例えば、ある製品があるとして、その製品の製造から破棄まで、製品の一生の間にどれだけ環境負荷のかかる工程や物質が使われているか、というものを表したものです。
つまりこのLCAソフトウェアとは、環境影響評価を数値で表すための計算をするソフトウェアというわけです。
発売元となる、(社)産業環境管理協会は、もともと公害防止などを支援していくことが主な
業務の団体だったそうですが、1992年から地球環境問題にかかるようになり、現在では
環境経営を支援しているようです。事業には、エコプロダクツ展であったり、エコリーフ
ラベルなどと言えば聞いたことがあるかもしれません。
近年の地球環境問題を意識した経営が必要となっているところから、社内に環境問題対策
チームなどができているが、専門的な知識を評価できるものがないので、どれくらいの
知識があるかを測る検定なんかも今後は予定しているそうです。
さて、このソフトの中身というか、どのように動くかというと、このソフトは内部に
データベースを持っており、それが販売元の管理する中央サーバと連動することで
汎用性を高めたソフトウェアになっているようです。
ではどんなことができるか、というところですが、頂いたレジュメにいくつか特徴的な
機能が書かれているので、ざっくりピックアップしてみますと、
1.ネットワークデータ授受および公開機能
作ったデータを中央サーバを介して授受できます。オンラインストレージ的な
使い方ですね。なので特定のヒトにデータを渡すとサーバからデータは削除されます。
データ公開という設定にすると、不特定多数のヒトにデータを公開することもできる
ようです。
2.BOMインポート機能
手持ちのプロセスデータをCSVファイルで作って一括登録が可能。
3.プロセスデータの抽象化・合算機能
製品製造時の成分の中には、取引先(他社)に公開したくないものもあります。
しかし、環境負荷にかかわるものを隠すと透明性がなくなるので、成分を抽象化した
名称で表示させて相手に渡すことができる機能です。
分かりにくですが、例えば、カレーを作る場合、ターメリックやカルダモンなど
を使用しているが、それを使っていることはバラしたくない、そんな場合は、”香辛料”
という名目に変更したり(抽象化機能)、もっと下層の内容、例えば肥料製造や農薬
製造の量だけで表示(合算機能)ということが可能だそうです。
こうすることによって、環境負荷が少ないことをアピールしつつも、自社の企業秘密
部分は隠せるというわけです。
4.自動アップデート機能
基本的にソフトウェアは、オンラインにつながっている状態で使っていれば、計算結果に
影響を及ぼさない部分は自動的にアップデートがオンラインでかかるようになっている
ようです。
5.拠点間距離データを搭載
例えば、中国で製造した品物を日本に持ってくる場合、どれくらいの距離があるのかの
データがないと計算ができないですね。そんなデータを300拠点以上持っているそう
です。
6.地域別構成比データ
例えば、ガーナという国はコメを100%輸入しているそうで、どこから輸入しているか
というデータがこのソフトのデータベースには入っているそうです。
ほかにも色々ありますが、ざっとこんな感じでしょうか?
気になるデータベースの中身ですが、今回は、ある程度数値が公表されているものは
少々その信ぴょう性が薄いものも入れてあり、項目には、”その他の環境負荷成分”と
いうよくわからないものも数値として入っているそうです。
このような作りになっている理由は、なんらかの環境負荷がかかっているにも関わらず
項目がないために数値がゼロになっている、というのを防ぐだめだとか。
データベースのデータ自体は、いろんな統計資料から作ってあるらしく、今後も
データは増えていき、当面は修正もされていくそうです。
今回の開発のポイントは、高い網羅性、高い完全性、高い透明性、だそうです。
○必要動作環境
本ソフトはソフトだけで1.5Gもあるらしく、ゆえに動作も結構なスペックを
要求されるようです。OSはWinXP SP3以降、CPUは、Cor2Duo以上、メモリ2GB、
HDD20GB以上の空き容量です...HDD容量はちょっとオーバーに書きすぎと
言ってましたが、それでも結構なスペックが必要ですね。
○このソフトでできないこと
1.エコリーフの算定
2.経済産業省カーボンフットプリント制度試行事業での利用
3.初期搭載データとの数値比較による優位性主張
4.初期搭載データ間を比較することによる素材間比較
○有償版と無償版
同ソフトは、通常の有償版のほかに、無償版というのが用意されているようです。
これは、LCAソフトを使ったことがないヒト用に、どんなものか、触ってみる
程度の機能に制限されたもので、広くライフサイクルアセスメントという考え方、
見方を普及するために公開されるようです。
なので、無償版は、最大5つまでしか新規のプロセスデータをつくることしか
できない、など機能が制限されています。中央サーバへのアクセスは可能なようです。
(同製品のサイトは2010年10月22日開設予定だそうです。)
○料金
1クライアント、初期契約料¥52,000、年間利用料¥21,000〜となっており、
比較的リーズナブルで中小企業でも使いやすい料金設定ではないか?と思います。
○説明を聞いてみた感想
朝からの説明会だったのですが、ほぼ定員一杯の参加で、環境経営に関する
意識の高さが伺える説明会でした。
わたくしは初めてこの手のソフトの説明を聞いてみたのですが、まだまだツッコミ
どころはありそうですね。
質疑応答でも質問されている方がいらっしゃいましたが、今まで使っていたソフトの
データベースとの互換性の問題だとか、国がやっているカーボンフットプリント事業
との絡みなど、製造メーカーなどでは、どこを基準にしてよいのか、迷ってしまう
という課題が残るようです。
もちろん、このソフトで計算して出した数値というのは、ほとんどなんの問題も
ない、出所のしっかりしたデータに基づいた数値で評価できるものなんでしょうが、
別のデータを基準にしているものがあった場合、それとの比較は?と言われてしまえば
返答に困ってしまうかもしれません。
こういった基準を国がしきって、せめて国内では同じ基準で、というようにしないと
現場では混乱してしまうかもしれませんね。
その反面、使い勝手はかなりよさそうで、データベースも随時更新される、という点
では、最新の状況に応じて評価できる点はすばらしいと思います。しかもリーズナブル。
東京では本日と同様の説明会が10/27、10/29の二日間開催されるそうなので、
LCAソフト導入を検討されている方は参加されてみてはどうでしょ?